ラグビーW杯!
2019.10.17その他
台風19号は日本各地に甚大な被害を出しましたが、そんな中で行われたラグビーW杯の日本vsスコットランド戦で日本が見事に勝利。史上初めてのベスト8進出を決めました。
この試合を観た多くの日本人がその戦いぶりに感動し、涙した人も多かったようです。
一方で、台風で大変な中、わざわざラグビーの試合をする必要があるのか?という意見もありました。
それについて、イギリスの大手新聞が書いた記事があります。
ここでは日本人の試合開催に対する想い、開催のために途方もない努力をした多くの方々の存在を代弁してくれていました。
とても誌的で素晴らしい記事でしたので、ご紹介させて下さい。
少し長いですが、お時間ある時にお読みいただけたら嬉しいです。
イギリスの大手新聞が書いた記事
「黙祷は、1分にも満たない短いものだった。しかしそこには、過去に例を見ない状況で開催されるこの試合に対する、相反する感情の渦巻き、衝突が含まれていた。台風がつい数時間前に過ぎ去り、スタジアムの周りは洪水であふれ、救出作業も終わっていなければ、修復作業など始まってすらいない。
その黙祷が、一体誰に向かって、何人の犠牲者へ捧げられたのかは、誰も知る由はなかった。被害者の数は、未だに確定していなかったのだから。明け方は4名とされていた死傷者数は9名へ、試合開始時には24名に、ハーフタイムに26名、試合が終わり少し経つ頃には28名へと増えていった。
そんな状況で、彼らは試合を開催するべきだったか。あなたは疑問に思っただろう。ラグビー協会はそのことを日曜早朝に話し合い、日本人の組織委員に判断を委ねることを決定した。なぜこんな状況でスポーツをするのか。なぜスポーツを見るのか。未だに多くの人が行方不明で、堤防は壊れ、川は溢れ、会場の横浜から東へ16マイルしか離れていない川崎では100万人が避難し、30マイル北に位置する相模原では、土砂災害でなくなった人の、正確な数さえ把握できていない状況で。
災害への一種の清涼剤としてかも、日常を取り戻すためかも、台風に対する挑戦かもしれない。いや、それ以上に『私たちは今生きていて、少なくとも今ここにあるものは楽しむことを決意した』と言う、極めて重要な意思表示の1つとしてかもしれない。
彼らは試合の開催を決めた。ホスト国としてのプライドもあっただろうが、会議に出席した委員会幹部は、『世界に向けて、自分たちはできると言うことを証明したい』というのが開催を決定した最たる理由だと、繰り返し主張した。
この会場の被害が甚大でなかった理由の一つは、鶴見川から溢れ出す水を、建物の下へと流す貯水設備の上にスタジアムが建っているからだった。スタジアム自体が街の災害対策設備の支柱なのだ。そしてこの試合で、日産スタジアムは街の『精神的』支柱にもなった。組織委員たちは、台風が去ったら一刻も早く動き出せるよう、土曜の夜はスタジアムに泊まり込んだ。明け方には整備班が現地入りし、更衣室から水を吸い出し、消防隊は全ての機械設備の点検を3度行い、ピッチに流れ込んだ泥やゴミをホースで一掃した。同時に、組織委員会は政府や地方自治体と協力し、水道局、道路局、バス会社や鉄道会社などの各種交通機関と連絡を取り、複雑な課題を解決していった。
日本では、このワールドカップにおける『おもてなし』とは何か、という議論が活発になされてきた。私も正確に翻訳することはできないが、この国で4週間を過ごして、漠然とだが理解したかもしれない。それは、客人を喜ばせるために全力を、いや、何かそれ以上を尽くすということだ。しかし彼らの『おもてなし』は、私たちの予想をはるかに上回っていた。試合前、多くの人が全くの勘違いをしていたのはそのせいかもしれない。『日本人はみんな、この試合が中止になり、過去に勝利したことのないスコットランドとポイントを分け合うことを望んでいる』という勘違いを。
中には、『日本は故意にスコットランドの妨害をしている』と言う壮大な陰謀論を唱える者までいた。スコットランドラグビー協会の最高責任者マーク・ドッドソンも、完全な勘違いをしていた。怒りに任せて、『巻き添え被害(ポイントを分け合うこと)に合えば法的措置を検討している』などと口を滑らせた。これは、日本人たちがどう覚悟を決めたかのプロセスに対する恥ずべきミスリーディングだ。
黙祷に続いて、日本の国歌である君が代が流れた。日本人はこの国歌に複雑な思いを抱いており、歌わない人もいる。そのため大会中、ファンたちに国歌斉唱を促すキャンペーンが開かれている。この日、会場の多くの人が参加した国歌斉唱は、感動的で、荘厳だった。選手を鼓舞する歌声が、大きく大きく、街中に響き渡るほど広がっていった。あの瞬間、あなたは思い知っただろう。スコットランドが対面しているのはラグビー文化を持たない極東の島国ではなく、強大なサポーターを持つ、己の真価を世界に証明しようと言う覚悟の決まったチームだということを。
前半の30分間、日本は魔法のような、激しく、獰猛で、集中したラグビーを見せた。次に対戦する南アフリカも含め、トーナメントに残った全てのチームを凌駕するほどの。スコットランドも善戦したが、より頑強で、より鋭く、より俊敏であった日本に、完全に圧倒された。
日本のラグビーファンたちは、今なら何だってできる、どこが相手だって倒せると信じているだろう。そして、日曜日の夜に彼らが偉業を成し遂げた今、日本人だけではなく世界中の誰しもが、同じように思っている。」
記事は以上です。
当然ですが、開催決定までは葛藤があったと思います。
でも、裏方の努力、選手の被災地への思い、素晴らしい戦いに日本が一つになり、日本中が希望を持つことができたのではないでしょうか?
きっと、選手たちも同じ気持ちでプレーしたと思います。
実際、試合後のインタビューでは、台風被害にあった方への慰労の言葉が日本、スコットランド双方の選手から聞かれました。
今回、それらを世界に発信する事で、ラグビーの試合以上の価値を見せられたのではないでしょうか?
W杯における日本代表チームの戦いは、まだまだ続きます。
次は、優勝候補の南アフリカ戦。
被災者に勇気を届けるためにも、頑張って欲しいですね。
写真・ロイター/アフロよりお借りしました
最新記事
-
2024.11.16
-
2024.11.9
-
2024.11.5
-
2024.10.31
アーカイブ
- 2024年11月 (3)
- 2024年10月 (4)
- 2024年9月 (4)
- 2024年8月 (4)
- 2024年7月 (4)
- 2024年6月 (4)
- 2024年5月 (4)
- 2024年4月 (4)
- 2024年3月 (4)
- 2024年2月 (4)
- 2024年1月 (4)
- 2023年12月 (4)
- 2023年11月 (6)
- 2023年10月 (5)
- 2023年9月 (4)
- 2023年8月 (4)
- 2023年7月 (5)
- 2023年6月 (4)
- 2023年5月 (4)
- 2023年4月 (4)
- 2023年3月 (5)
- 2023年2月 (4)
- 2023年1月 (4)
- 2022年12月 (6)
- 2022年11月 (4)
- 2022年10月 (4)
- 2022年9月 (4)
- 2022年8月 (4)
- 2022年7月 (5)
- 2022年6月 (4)
- 2022年5月 (3)
- 2022年4月 (4)
- 2022年3月 (4)
- 2022年2月 (4)
- 2022年1月 (4)
- 2021年12月 (4)
- 2021年11月 (5)
- 2021年10月 (7)
- 2021年9月 (8)
- 2021年8月 (9)
- 2021年7月 (4)
- 2021年6月 (5)
- 2021年5月 (4)
- 2021年4月 (4)
- 2021年3月 (4)
- 2021年2月 (4)
- 2021年1月 (5)
- 2020年12月 (4)
- 2020年11月 (5)
- 2020年10月 (7)
- 2020年9月 (5)
- 2020年8月 (7)
- 2020年7月 (7)
- 2020年6月 (6)
- 2020年5月 (9)
- 2020年4月 (14)
- 2020年3月 (9)
- 2020年2月 (7)
- 2020年1月 (8)
- 2019年12月 (5)
- 2019年11月 (10)
- 2019年10月 (9)
- 2019年9月 (7)
- 2019年8月 (8)
- 2019年7月 (19)
- 2019年6月 (13)
- 2019年5月 (17)
- 2019年4月 (4)
- 2019年3月 (30)